2007年10月23日(火) 西日本新聞に紹介されました

 

ADHDの子と家族の体験記 NPO法人「えじそんくらぶ」が本に

 ●「落ち着きない」を責めないで 周りは症状を理解し、共感し、支えて
 
 発達障害の1つ、注意欠陥多動性障害(ADHD)のある子どもや家族を支援する特定非営利活動法人(NPO法人)「えじそんくらぶ」(事務局・埼玉県)は、当事者や家族の手記集「おっちょこちょいにつけるクスリ‐ADHDなど発達障害のある子の本当の支援」(ぶどう社)を出版した。医療や学校、社会的支援のあり方についての解説も多く掲載し、発達障害をめぐる「現実」を幅広く伝える。 (江藤俊哉)

 「あのときの私は抜け出すことのできない暗闇をさまようようだった」。ある母親はつづる。

 1歳半で始まった息子の問題行動。好きなことには極端に集中し、気に入らなければ一切しない。友だちとのけんかは毎日。じっと座っていられない。先生が話しているのに大きな声でしゃべる。列に並ばない…。

 周囲も先生も「乱暴者」「わがまま」と息子を責め、「しつけの問題」と母親を責めた。毎日、息子が泣くまで怒鳴り、その度に激しい自己嫌悪に陥る。夫婦げんかは絶えず、やがて離婚した。見る物に色はなく、聞く音はすべて単調。もう限界だった。

 小学校入学2カ月後の雨の夜、泣き叫ぶ息子を車に押し込み、着いたのは真っ暗な山奥。息子を引きずり降ろし、車を急発進した。すぐに車を止め、ハンドルに突っ伏した。涙が止まらない。息子が追い掛けてきた。「ごめんなさい」。ドアにしがみつくその顔は恐怖に引きつっていた。車に引き入れ、抱き締めた。

 こんなかわいい子を山に捨てるような母親だから、こんな子に育ってしまった。すべて母親失格の私の責任だ。「この子を殺して自分も死のう」

 細い首に手を掛けた。手に、わが子のぬくもりが伝わってきた。ぎりぎりで思いとどまった。

 本書はこの母子を含む10組の手記を掲載している。いずれも発達障害特有の「見えにくさ」からくる苦しみを訴える。

 ADHDは「忘れっぽい」「落ち着きがない」「考えずに行動する」「多弁」など不注意、多動性、衝動性の3つを主症状とした中枢神経系の障害だ。「やる気や努力の問題」と誤解されやすく、周囲は本人や家族を責め、家族も本人を責める。このため、うつ症状など「二次障害」や虐待を招く危険性も大きい。

 本書は「周囲の理解と支援で、ADHDは個性にも才能にもなる」と指摘する。孤立する家族への共感と理解の必要性も強調している。無理心中を思いとどまった母子も数カ月後、医師からADHDの診断とともに「お母さん、今までよく頑張りましたね」と声を掛けられ、「その一言で暗闇から解放された」とつづる。

 イラストを担当した同クラブ会員菊川眞由美さん(42)=福岡県筑紫野市=は「医師、保健師、教育関係者、そして発達障害のある子を抱える家族に読んでほしい。仲間はたくさんいる」と話した。ぶどう社=03(5283)7544。

=2007/10/23付 西日本新聞朝刊=

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http://www.nishinippon.co.jp/nnp/lifestyle/topics/20071023/20071023_001.shtml